感受性とストラテラ

ADHDの症状を抑える薬として、ストラテラがある。

一錠40mgで、私は1日に80mgを服用する。

ストラテラの効果は様々だが、私の場合は思考の散らかり具合がマシになり、少し頭がスッキリする。

そして最も大きい効果、もとい副作用は、感受性が抑制されることだ。

これはストラテラの優れた効果でもあり、副作用でもある。

高すぎる感受性は様々なストレスにさらされる社会生活では「生きづらさ」の大きな要因となる。

この感受性が抑制されることで、つまりは今よりも鈍感になることで、感じすぎていた痛みが痛みでは無くなるのだ。

そのかわり、音楽や映画、小説、漫画などを楽しむとき、身を焦がすような感情を生み出していた感受性はすっかりなりを潜めてしまう。

 

少しでも生きやすくするためにストラテラを飲むか。

それとも鋭敏な感受性を最大限に発揮し、痛みを抱えながら生きていくか。

悩ましいところではあるが、何のことはない。

必要になれば飲めばいいし、そうでなければ飲まなければいいのだ。

まあ、ストラテラは効果が出るまでに時間がかかるので、今すぐに効果が欲しいと言う場合はどうしようもないのだが…

 

 

追記

感受性が元の水準に戻ったからか、ネガティブ思考によるメンタルの落ち込み方が酷くなった。というより、これも元に戻ったと言うべきだろう。

ストレスを引き摺りやすく、いつまで経ってもクヨクヨしてしまうし、全身の倦怠感やずっと疲れているような感覚、疲れやすい体質が全面に出ている感じがする。なかなか前向きになれないし、嫌なことも忘れられない。

 

人が怖い。悪意を向けられるのが怖い。迷惑をかけるのが怖い。嫌悪が敵意に変わるのが怖い。

自分が迷惑をかけているのでは無いか、言わないだけで物凄くイラつかせているのでは無いか。疑いが確信に変わるような上司の態度。言葉の端々から感じられる私への嫌悪感。ああ、私はこんな世界に生きていたんだった。これを気にしないで生きていられたのが嘘のようだ。

恐怖が増せば増すほど、細かい部分に目がいくようになる。目線、表情、態度、口調や声の高さ、雰囲気…あらゆる情報が嫌でも入ってくる。可能な限り顔を見ないようにしても、目線を合わせないようにしても、しかし情報を拾ってしまう。拾えてしまう。被害妄想なのかもしれない。でも本当にそうだろうか。いいや、そんなことはない。明らかにこの人は私を嫌悪している。それが気になってしまう。別に好かれたい訳ではなくて、とにかく怖いのだ。嫌悪が敵意に変わり、悪意に変わり、攻撃されるのが。何かを指摘されるにしても、言葉の端々に呆れたような、ふざけているのかというような苛立ちが感じ取れる。怖くて手が震えてくる。心臓も早鐘のようだ。汗が噴き出して、頭が真っ白になる。久々に精神安定剤を飲んだ。ワイパックスだ。ストレスで胃腸が痛くなってお腹を下す。まあ下痢はいつものことだが…

 

自分のストレス耐性はこんなにも低かったのかと驚いたくらいだ。ストラテラを飲んでいたときは、相手の嫌悪感に気が付いてもここまで動揺したり恐怖を感じたりするということはなかった。ただ少し残念に思い、しかしあまり気に留めたりはしなかった。

それが、ストラテラをやめた途端にこれだ。まるで子羊のようだ。

人間が怖くて仕方がないというかつての自分を完全に思い出した。

 

これで良く2年間も社会人として生きていられたものだ…この1年がストラテラによってどれだけストレスフリーに過ごせたかが分かる。いや、全くストレスがなかった訳ではない。働いていればそれなりにストレスを受けるが、娯楽はあるし、何より猫たちがいる。ストレスに耐えられるのは猫のおかげだと思っていた。違った。薬だ。ストラテラなのだ。ストラテラをやめてからは、猫がいてもストレスを発散しきれなくなった。だんだん溜まってきて、今は結構つらい。

 

ストラテラ抗鬱剤に似た作用があると医師が説明してくれたのを思い出す。

やはり服用によってもたらされる「鈍感さ」が精神的な負荷を和らげてくれているのだろうという予測はそれなりに的を射ていそうである。

 

フィクションを楽しむ上では、鋭敏な感受性は何よりの宝だ。あらゆる情報が感情を昂らせてくれる。

しかし、社会に生きる上ではこの上ない障害となるのだ…

せっかく持って生まれたものなのだから、これを武器に生きていけたらいいのにと思うが、残念ながらこの武器は私自身を傷付ける諸刃の剣なのだった。

趣味に生きる人間としては、この感受性を発揮できないのは大変残念に思うのだが、生きるのが辛くなってしまっては本末転倒というものだ。

猫を育み、フィクションを楽しむために生きているのに、辛くなったら何も楽しめなくなってしまう。

となれば、やはり薬に頼るしかないのだ…

効果がイマイチはっきりしないと思っていたストラテラだったが、全然そんなことはなかった。

どうやら私は、この薬を飲み続けなければ生きづらさをどうにもできないようである。

コンサータだけじゃ、駄目なのか…